転職して賃金が増えた人は40.5%|「残る」を同じ精度で比較するために

転職して賃金が増えた人は40.5%

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私は転職を勧めません。ただ、残ることを勧めているわけでもありません。

困るのは、比較しないまま「今のままでいい」と決めることと、比較しないまま「動けば変わる」と思い込むこと、その両方だと思います。

この記事では、まず公的な統計を置きます。そのうえで、残るという選択肢を動く選択肢と同じ精度で並べるために、何を確認すればいいかを整理します。


転職した人の賃金は、こうなっています

厚生労働省の令和6年 雇用動向調査では、転職して入職した人の賃金が前職と比べてどう変わったかが公表されています。

転職入職者の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
転職入職者の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
割合
増加 40.5%
減少 29.4%
変わらない 28.4%

さらに内訳があります。

  • 1割以上の増加:29.4%
  • 1割以上の減少:21.7%

※ 3つの割合を足すと98.3%になります。残りは不明分です。

この数字の読み方

増えた人が4割、減った人が3割、変わらない人が3割です。

「転職すれば年収が上がる」も「転職すると下がる」も、どちらも一面しか見ていないことになります。上がる人のほうが多い。ただし、3割は下がっている。

もう1つ、1割以上下がった人が21.7%いることも見ておきたいところです。5人に1人です。少数の例外ではありません。

注意しておきたいこと

この数字は転職した人の分布であって、「転職すればこうなる」という予測ではありません。

もう1つ、ここで比較されているのは入職した時点の賃金です。入社後に上がったか下がったかは含まれていません。一時的に下げて入り、あとから戻すケースも、この表では「減少」に入ります。

数字は判断材料であって、答えではないと思います。


年齢で見ると、少し違います

同じ調査には年齢階級別の数値もあります。

年齢階級別の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
年齢階級別の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
年齢 増加 減少 1割以上の増加 1割以上の減少
20〜24歳 50.5% 16.8% 38.5% 11.2%
25〜29歳 46.3% 29.2% 37.9% 17.6%
30〜34歳 46.1% 24.2% 36.0% 16.3%
35〜39歳 45.5% 24.3% 35.3% 16.3%

20代後半から30代は、いずれも増加が45%を超えていて、全体(40.5%)より高いです。「この年齢だと不利」という一般論は、この統計からは出てきません。

一方で、1割以上の増加は年齢が上がるほど少しずつ下がっていきます(20〜24歳の38.5%に対し、35〜39歳は35.3%)。上がる人の割合は保たれていても、上がり幅は伸びにくくなっていくという形です。


ここから先は、残る側の条件を、動く側と同じ精度で書き出す話です。書き出す作業をひとりでやると、堂々めぐりになることがあります。人に話しながら整理する形もあって、無料のものもあります。

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「残る」を選択肢として扱うために

統計は「どちらが得か」を教えてくれません。ここからは、比較の仕方の話です。

残るか動くかを考えるとき、先に切り分けたいことが3つあります。

1. 給料が上がらないのは、会社の構造か、今の位置か

同じ「上がらない」でも、原因が2つあります。

  • 構造:等級や給与テーブルの上限が決まっていて、今の職種では頭打ち
  • 位置:制度上は上がる余地があるが、今の役割がそこに乗っていない

前者なら、社内で頑張っても変わりません。後者なら、動かなくても変わる可能性があります。

確認する場所は決まっています。給与規程と等級制度です。開示されている会社なら読めます。開示されていないなら、それ自体が情報です。

2. 「年収を上げる」と「働きやすさを上げる」は、同時に狙えるか

同時に狙えることはあります。ただ、両方を条件にすると求人の母数が急激に減ります。

現実的なのは、どちらかを主、どちらかを従にすることだと思います。

  • 年収を主にするなら、働きやすさは「下がらなければ可」の基準にする
  • 働きやすさを主にするなら、年収は「維持できれば可」の基準にする

先ほどの統計で「変わらない」が28.4%いることを思い出すと、年収を維持したまま環境を変えるという結果は、けっして珍しくありません。

両方を上げることだけを条件にすると、動けないまま時間が過ぎます。

3. 社内で試せることを、全部試したか

動く前に確認しておくと、あとの判断が楽になります。

  • 異動や職種転換の希望を、制度に乗せて出したことがあるか(雑談で伝えたのは出したうちに入りません)
  • 評価面談で、上げるために何が足りないかを具体的に聞いたことがあるか
  • 今の不満が、会社の問題なのか、直属の1人との相性の問題なのか

3つ目が特に大事だと思います。相性の問題なら、異動で解決することがあります。 会社ごと変える必要がない場合まで転職の話にすると、コストが大きくなります。


残ったほうがいい場合

条件として挙げるなら、この3つだと思います。

1. 不満の中身が、あと1〜2年で入れ替わる見込みがあるもの

上司の異動、組織改編、担当替え——時限性のある不満なら、待つほうが安く済むことがあります。

判断材料は、その会社での異動サイクルです。3年で回っているなら待てます。10年動いていないなら、時限性ではありません。

2. 今の会社でしか積めない経験の途中にある

進行中の案件、まだ終わっていない立ち上げ、あと半年で完結する担当——途中で抜けると職務経歴書に書けない経験があるなら、終わらせてからのほうが手札が増えます。

先ほどの職務経歴書の話とつながりますが、担当範囲と結果が書けるかどうかで書類の強さが変わります。

3. 動く理由が、逃げたい以外に言語化できていない

これは「残れ」という話ではなく、準備が終わっていないという意味です。

逃げること自体は悪いことではありません。ただ、面接で「なぜ当社なのか」に答えられないまま進むと、条件の悪い場所に着地しやすくなります。

言語化ができていないなら、求人を見る前に整理する段階です。

整理をひとりでやると、堂々めぐりになることがあります。人に話しながら整理する形もあって、無料のものもあります。

ただし無料なら報酬は企業側から出ています。整理のあとに求人紹介へ進む流れが前提になっている、ということです。下に挙げたものがその形でした。「まだ決めていない」段階で使うなら、そこを分かったうえで使うほうがいいと思います。

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それでも動くなら

比較した結果として動くなら、順番があると思います。

  1. 経歴を書き出す(応募しなくても書けます)
  2. 市場の反応を見る(スカウト登録は応募ではありません)
  3. 相場を知る(求人票の給与レンジと、実際の提示は別です)
  4. そのうえで応募先を決める

1と2は、残ると決めた場合でも無駄になりません。 今の会社での位置づけを測る材料になるからです。

「転職活動をする」と「転職する」は別のことです。分けて考えると、始めるハードルが下がります。


まとめ

  • 令和6年の統計では、転職入職者の賃金は増加40.5%/減少29.4%/変わらない28.4%
  • 1割以上下がった人が21.7%います。上がる前提で組むのは危ういです
  • 35〜49歳は増加の割合が全体より高い(45〜46%台)。ただし上がり幅は年齢とともに小さくなります
  • 給料が上がらない原因が構造か位置かを先に切り分ける
  • 年収と働きやすさは、どちらを主にするかを決めると動けるようになります
  • 時限性のある不満/途中の経験/言語化が終わっていないなら、残るほうが合理的なことがあります
  • 経歴を書き出すことと市場の反応を見ることは、残る場合でも無駄になりません

比較していない「残る」は、選択ではなく保留です。選択にするために、数字と条件を並べるところからでいいと思います。


出典

  • 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」3 転職入職者の状況 ― 転職入職者の賃金変動状況(増加40.5%/減少29.4%/変わらない28.4%、1割以上の増加29.4%/1割以上の減少21.7%)および年齢階級別の数値

2026年9月12日に確認した内容です。統計は毎年更新されるため、最新の数値は厚生労働省のサイトでご確認ください。

本記事は一般的な情報の整理であり、個別の転職判断についての助言ではありません。