カテゴリー: 転職の判断材料

求人票・書類・面接・統計から、転職するかどうかを判断するための材料をまとめた記事

  • 転職して賃金が増えた人は40.5%|「残る」を同じ精度で比較するために

    転職して賃金が増えた人は40.5%|「残る」を同じ精度で比較するために

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    私は転職を勧めません。ただ、残ることを勧めているわけでもありません。

    困るのは、比較しないまま「今のままでいい」と決めることと、比較しないまま「動けば変わる」と思い込むこと、その両方だと思います。

    この記事では、まず公的な統計を置きます。そのうえで、残るという選択肢を動く選択肢と同じ精度で並べるために、何を確認すればいいかを整理します。


    転職した人の賃金は、こうなっています

    厚生労働省の令和6年 雇用動向調査では、転職して入職した人の賃金が前職と比べてどう変わったかが公表されています。

    転職入職者の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
    転職入職者の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
    割合
    増加 40.5%
    減少 29.4%
    変わらない 28.4%

    さらに内訳があります。

    • 1割以上の増加:29.4%
    • 1割以上の減少:21.7%

    ※ 3つの割合を足すと98.3%になります。残りは不明分です。

    この数字の読み方

    増えた人が4割、減った人が3割、変わらない人が3割です。

    「転職すれば年収が上がる」も「転職すると下がる」も、どちらも一面しか見ていないことになります。上がる人のほうが多い。ただし、3割は下がっている。

    もう1つ、1割以上下がった人が21.7%いることも見ておきたいところです。5人に1人です。少数の例外ではありません。

    注意しておきたいこと

    この数字は転職した人の分布であって、「転職すればこうなる」という予測ではありません。

    もう1つ、ここで比較されているのは入職した時点の賃金です。入社後に上がったか下がったかは含まれていません。一時的に下げて入り、あとから戻すケースも、この表では「減少」に入ります。

    数字は判断材料であって、答えではないと思います。


    年齢で見ると、少し違います

    同じ調査には年齢階級別の数値もあります。

    年齢階級別の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
    年齢階級別の賃金変動(厚生労働省「令和6年 雇用動向調査」)
    年齢 増加 減少 1割以上の増加 1割以上の減少
    20〜24歳 50.5% 16.8% 38.5% 11.2%
    25〜29歳 46.3% 29.2% 37.9% 17.6%
    30〜34歳 46.1% 24.2% 36.0% 16.3%
    35〜39歳 45.5% 24.3% 35.3% 16.3%

    20代後半から30代は、いずれも増加が45%を超えていて、全体(40.5%)より高いです。「この年齢だと不利」という一般論は、この統計からは出てきません。

    一方で、1割以上の増加は年齢が上がるほど少しずつ下がっていきます(20〜24歳の38.5%に対し、35〜39歳は35.3%)。上がる人の割合は保たれていても、上がり幅は伸びにくくなっていくという形です。


    ここから先は、残る側の条件を、動く側と同じ精度で書き出す話です。書き出す作業をひとりでやると、堂々めぐりになることがあります。人に話しながら整理する形もあって、無料のものもあります。

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    「残る」を選択肢として扱うために

    統計は「どちらが得か」を教えてくれません。ここからは、比較の仕方の話です。

    残るか動くかを考えるとき、先に切り分けたいことが3つあります。

    1. 給料が上がらないのは、会社の構造か、今の位置か

    同じ「上がらない」でも、原因が2つあります。

    • 構造:等級や給与テーブルの上限が決まっていて、今の職種では頭打ち
    • 位置:制度上は上がる余地があるが、今の役割がそこに乗っていない

    前者なら、社内で頑張っても変わりません。後者なら、動かなくても変わる可能性があります。

    確認する場所は決まっています。給与規程と等級制度です。開示されている会社なら読めます。開示されていないなら、それ自体が情報です。

    2. 「年収を上げる」と「働きやすさを上げる」は、同時に狙えるか

    同時に狙えることはあります。ただ、両方を条件にすると求人の母数が急激に減ります。

    現実的なのは、どちらかを主、どちらかを従にすることだと思います。

    • 年収を主にするなら、働きやすさは「下がらなければ可」の基準にする
    • 働きやすさを主にするなら、年収は「維持できれば可」の基準にする

    先ほどの統計で「変わらない」が28.4%いることを思い出すと、年収を維持したまま環境を変えるという結果は、けっして珍しくありません。

    両方を上げることだけを条件にすると、動けないまま時間が過ぎます。

    3. 社内で試せることを、全部試したか

    動く前に確認しておくと、あとの判断が楽になります。

    • 異動や職種転換の希望を、制度に乗せて出したことがあるか(雑談で伝えたのは出したうちに入りません)
    • 評価面談で、上げるために何が足りないかを具体的に聞いたことがあるか
    • 今の不満が、会社の問題なのか、直属の1人との相性の問題なのか

    3つ目が特に大事だと思います。相性の問題なら、異動で解決することがあります。 会社ごと変える必要がない場合まで転職の話にすると、コストが大きくなります。


    残ったほうがいい場合

    条件として挙げるなら、この3つだと思います。

    1. 不満の中身が、あと1〜2年で入れ替わる見込みがあるもの

    上司の異動、組織改編、担当替え——時限性のある不満なら、待つほうが安く済むことがあります。

    判断材料は、その会社での異動サイクルです。3年で回っているなら待てます。10年動いていないなら、時限性ではありません。

    2. 今の会社でしか積めない経験の途中にある

    進行中の案件、まだ終わっていない立ち上げ、あと半年で完結する担当——途中で抜けると職務経歴書に書けない経験があるなら、終わらせてからのほうが手札が増えます。

    先ほどの職務経歴書の話とつながりますが、担当範囲と結果が書けるかどうかで書類の強さが変わります。

    3. 動く理由が、逃げたい以外に言語化できていない

    これは「残れ」という話ではなく、準備が終わっていないという意味です。

    逃げること自体は悪いことではありません。ただ、面接で「なぜ当社なのか」に答えられないまま進むと、条件の悪い場所に着地しやすくなります。

    言語化ができていないなら、求人を見る前に整理する段階です。

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    ただし無料なら報酬は企業側から出ています。整理のあとに求人紹介へ進む流れが前提になっている、ということです。下に挙げたものがその形でした。「まだ決めていない」段階で使うなら、そこを分かったうえで使うほうがいいと思います。

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    それでも動くなら

    比較した結果として動くなら、順番があると思います。

    1. 経歴を書き出す(応募しなくても書けます)
    2. 市場の反応を見る(スカウト登録は応募ではありません)
    3. 相場を知る(求人票の給与レンジと、実際の提示は別です)
    4. そのうえで応募先を決める

    1と2は、残ると決めた場合でも無駄になりません。 今の会社での位置づけを測る材料になるからです。

    「転職活動をする」と「転職する」は別のことです。分けて考えると、始めるハードルが下がります。


    まとめ

    • 令和6年の統計では、転職入職者の賃金は増加40.5%/減少29.4%/変わらない28.4%
    • 1割以上下がった人が21.7%います。上がる前提で組むのは危ういです
    • 35〜49歳は増加の割合が全体より高い(45〜46%台)。ただし上がり幅は年齢とともに小さくなります
    • 給料が上がらない原因が構造か位置かを先に切り分ける
    • 年収と働きやすさは、どちらを主にするかを決めると動けるようになります
    • 時限性のある不満/途中の経験/言語化が終わっていないなら、残るほうが合理的なことがあります
    • 経歴を書き出すことと市場の反応を見ることは、残る場合でも無駄になりません

    比較していない「残る」は、選択ではなく保留です。選択にするために、数字と条件を並べるところからでいいと思います。


    出典

    • 厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」3 転職入職者の状況 ― 転職入職者の賃金変動状況(増加40.5%/減少29.4%/変わらない28.4%、1割以上の増加29.4%/1割以上の減少21.7%)および年齢階級別の数値

    2026年9月12日に確認した内容です。統計は毎年更新されるため、最新の数値は厚生労働省のサイトでご確認ください。

    本記事は一般的な情報の整理であり、個別の転職判断についての助言ではありません。

  • 面接でこちらから聞く3つの質問と、内定を断るときの線引き

    面接でこちらから聞く3つの質問と、内定を断るときの線引き

    面接は選ばれる場ですが、同時にこちらが判断材料を取る場でもあります。

    とはいえ「何か質問はありますか」と言われて、その場で思いつくのは難しいと思います。用意していないと「特にありません」になります。

    この記事では、聞くべきことと、そもそも聞かなくても書いてあるはずのことを分けて整理します。後半は、内定が出てからの断り方です。


    まず、2024年4月にルールが変わっています

    面接で聞く前に確認したいことがあります。求人の時点で明示される労働条件が増えました。

    2024年4月1日施行の改正で、労働者の募集や職業紹介事業者への求人申込みの際、次の3つが明示すべき事項として追加されています。

    • 従事すべき業務の変更の範囲
    • 就業場所の変更の範囲
    • 有期労働契約を更新する場合の基準(通算契約期間または更新回数の上限を含む)

    とくに上2つが効きます。「入社直後の配属」ではなく、将来的にどこまで変わりうるかを書くことになったからです。

    従来から明示が必要な事項

    追加された3つとあわせて、募集時に明示される事項はこうなります。

    • 業務内容(雇入れ直後)/業務の変更の範囲
    • 就業場所(雇入れ直後)/就業場所の変更の範囲
    • 契約期間/契約の更新/更新する場合の基準
    • 試用期間
    • 就業時間・休憩時間・休日
    • 時間外労働
    • 賃金
    • 加入保険
    • 受動喫煙防止措置
    • 募集者の氏名または名称

    この一覧に載っていることは、面接で聞く前に求人票に書かれているはずのものです。 書かれていないなら、面接で聞くのではなく、なぜ書かれていないのかを含めて確認する話になります。


    こちらから聞く3つの質問

    限られた時間で1つ2つしか聞けないことが多いので、効くものに絞ります。

    1. 就業場所と業務の「変更の範囲」が、実際にどう運用されているか

    求人票には範囲が書かれています。ただ、書かれている範囲と、実際に動いている範囲は別です。

    「就業場所の変更の範囲に◯◯とありますが、直近数年で実際に異動された方はどれくらいいらっしゃいますか」

    範囲を広く書いておくのは会社側のリスク管理として普通のことなので、書き方そのものを責める質問にはしません。実績を聞きます。 数字が返ってこない、または「基本的にはありません」とだけ返ってくる場合は、書面に残らない話だと考えたほうがいいです。

    2. このポジションが空いている理由

    「今回の募集は、増員でしょうか。それとも欠員の補充でしょうか」

    増員なら、事業が伸びているか、人が足りていないかのどちらかです。欠員補充なら、前任者がどれくらいの期間在籍していたかまで聞けると、情報量が増えます。

    この質問は失礼にあたりません。採用側も説明できて当然の内容です。答えにくそうにされた場合、それ自体が情報になります。

    3. 入社後3ヶ月で期待されること

    「入社して最初の3ヶ月で、どこまでできている状態を期待されますか」

    これに具体的に答えられる会社は、受け入れる準備ができています。 「まずは慣れていただければ」で終わる場合、育成の設計がないか、面接官がそのポジションの実務を把握していないかのどちらかです。

    入ってから「思っていた仕事と違う」となる原因の多くは、ここが曖昧なまま進んだことにあると思います。


    聞かないほうがいいこと

    質問は多ければいいわけではありません。

    質問 理由
    調べれば分かる会社概要 調べていないことが伝わるだけです
    「御社の理念に共感しました」から始まる質問 質問ではなく感想です。時間を使います
    残業時間を最初に聞く 聞いていい内容ですが、順番を後ろにするだけで印象が変わります
    「私は採用されそうでしょうか」 その場で答えられません

    残業や休日は聞いていい内容です。 ただ、こちらの質問の1問目に置くと、他に聞きたいことがない人に見えます。業務内容の質問を先に置いてから聞くと、同じ内容でも受け取られ方が変わります。


    内定が出たあとの話

    ここからは断る側の話です。

    内定は、すでに労働契約です

    厚生労働省の解説では、採用内定によって「始期付解約権留保付労働契約が成立したと認められることが多い」とされています。単なる約束ではなく、契約が成立している状態という整理です。

    これは会社側にとって重い意味を持ちます。最高裁の大日本印刷事件(昭和54年7月20日)では、内定を取り消せる事由は「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実」であって、それを理由に取り消すことが客観的に合理的と認められ、社会通念上相当と是認できるものに限られると示されました。

    つまり、会社側から気軽に取り消すことはできません。

    本人からの辞退は、できます

    契約が成立しているなら辞退もできないのか、という話になりますが、そうではありません。

    厚生労働省の解説では、「労働者の意思に反して労働契約の履行を義務づけることはできない」とされており、その根拠として職業選択の自由(憲法22条1項)が挙げられています。

    辞退を理由に損害賠償を請求されるのではないか、という心配をする方がいます。同じQ&Aでは、辞退や取消しの仕方が信義則に著しく反する場合には損害賠償を求められる可能性もあり得る、とされています。裏を返せば、問題になるのはそこが著しく欠けたときです。早く伝えて筋を通すのであれば、心配する部分ではないと思います。(個別の事案については、労働局の総合労働相談コーナーなどに相談できます。)

    内々定は、また別です

    内々定については、「内定の段階に比べて多くの場合に労働契約を締結したとの認識には至っていない」とされています。個別の事情によっては内定と同じ扱いになることもありますが、内々定の辞退が違法になることは「殆んど考えにくい」と解説されています。


    断るときの線引き

    制度上は断れます。ただ、実務として気にしたいのは別の部分です。

    早いほど問題になりません

    辞退の連絡は、決めた時点でします。悩んでいる時間と、伝えるのが遅れる時間は別のものです。

    会社は内定を出した時点で他の候補者への連絡を止めていることがあります。1日でも早いほうが、双方にとって傷が浅くなります。

    理由は、詳しく話さなくて構いません

    「他社に決めた」で足りると思います。どこに決めたか、なぜそちらなのか、条件はいくらか——このあたりは答える義務がありません。

    引き止めにあった場合も同じです。条件を上げると言われたときに、金額の交渉に入ると辞退の話が止まります。 交渉する気がないなら、条件の話には乗らないほうが早く終わります。

    電話か、メールか

    先方から電話で内定連絡を受けているなら電話、メールだけで進んできたならメールで問題ないと思います。連絡手段を合わせるのが無難です。

    返事を待ってもらう場合

    複数社を並行していて、返事を保留したいことがあります。これも伝えて構いません。

    • いつまで待ってほしいかを、こちらから日付で示す
    • 「検討します」だけで放置しない
    • 示した日付を過ぎるなら、その前にもう一度連絡する

    日付を出さずに「少し考えさせてください」とだけ言うと、待つ側が期限を決めることになります。 そこから催促が始まって、落ち着いて比べられなくなります。


    まとめ

    • 2024年4月から、募集時に「業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「更新の上限」が明示されます。 書かれていない場合、それ自体が確認事項です
    • 面接で聞くのは、変更の範囲の実際の運用/ポジションが空いた理由/3ヶ月後の期待
    • 残業や休日は聞いていい内容です。順番を後ろにするだけで受け取られ方が変わります
    • 内定は始期付解約権留保付労働契約とされ、会社側からの取消しは限定されています
    • 本人からの辞退は職業選択の自由にもとづいて可能です。内々定の辞退が違法になることは想定されていません
    • 断るときは早く、理由は簡潔に、条件交渉には乗らない
    • 保留するなら、日付をこちらから出す

    面接で聞く質問を用意することと、内定を断る準備をしておくことは、同じことの裏表だと思います。断れる前提で受けているかどうかで、面接での話し方が変わります。


    出典

    • 厚生労働省「2024年4月から、労働者の募集や職業紹介事業者への求人の申込みの際、明示しなければならない労働条件が追加されます」(改正職業安定法施行規則・2024年4月1日施行)― 追加された3事項および従来からの明示事項
    • 厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「採用の内定・内々定について、取消や辞退する場合の注意点」― 始期付解約権留保付労働契約、大日本印刷事件(昭和54年7月20日最高裁)、職業選択の自由(憲法22条1項)、内々定との違い

    いずれも2026年9月12日に確認した内容です。制度は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省のサイトでご確認ください。

    本記事は一般的な情報の整理であり、個別の事案についての法的な助言ではありません。具体的なトラブルについては、労働局の総合労働相談コーナーなどにご相談ください。

  • 職務経歴書と履歴書に「書かなくていいこと」|書類選考の仕組みから逆算して整理しました

    職務経歴書と履歴書に「書かなくていいこと」|書類選考の仕組みから逆算して整理しました

    職務経歴書を書き始めると、まず手が止まるのは何を書くかではなく何を書かないかだと思います。

    書けることは山ほどあります。ただ、書類選考にかけられる時間は長くありません。全部書くと、いちばん見てほしいところが埋もれます。

    この記事では、2つに分けて整理します。

    • 制度として書く必要がないもの(厚生労働省が示している範囲)
    • 選考の仕組みから見て、書いても効かないもの

    前半は根拠のある話、後半は書き方の話です。


    1. 履歴書に「書かなくていい欄」は、国が決めています

    日本産業規格(JIS)の解説には長らく履歴書の様式例が載っていましたが、2020年7月、日本規格協会がこの様式例を解説から削除しました。規格そのものが廃止されたわけではなく、参考として載っていた履歴書の様式例がなくなった、ということです。

    代わりに、厚生労働省が2021年4月に新しい履歴書の様式例を公表しています。

    この様式例で、過去の様式にあった次の4つの欄が設けられていません。

    • 配偶者
    • 扶養家族数(配偶者を除く)
    • 配偶者の扶養義務
    • 通勤時間

    理由は、これらが応募者のプライバシー性の高い情報だからです。

    厚生労働省の履歴書様式例に設けられていない欄と、性別欄の扱い
    厚生労働省の履歴書様式例に設けられていない欄と、性別欄の扱い

    性別欄は「任意記載」です

    同じ様式例で、性別欄は「男・女」の選択式ではなく任意記載欄に変更されました。厚生労働省は未記載とすることも可能と明記しています。

    つまり、性別を書かないまま提出しても、様式として不備ではありません。

    市販の履歴書用紙には、いまも旧様式のまま配偶者欄や通勤時間欄が残っているものがあります。用紙に欄があることは、書く義務があることを意味しません。 気になる場合は、厚生労働省の様式例をダウンロードして使う方法もあります。


    2. 採用側が「聞いてはいけない」とされている事項

    もう一段はっきりしている話があります。厚生労働省は、採用選考において把握そのものを避けるべき事項を挙げています。

    本人に責任のない事項

    • 本籍・出生地に関すること
    • 住宅状況に関すること(間取り・部屋数・住宅の種類・近隣の施設など)
    • 家族に関すること(職業・続柄・健康・病歴・地位・学歴・収入・資産など)
    • 生活環境・家庭環境などに関すること

    本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)

    • 宗教に関すること
    • 人生観・生活信条などに関すること
    • 思想に関すること
    • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
    • 支持政党に関すること
    • 尊敬する人物に関すること
    • 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること

    選考の方法として配慮すべきこと

    • 身元調査の実施
    • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断
    • 本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用

    最後の項目が効いてきます。適性・能力に関係のない項目を応募書類に含めること自体が、配慮すべき事項として挙げられています。

    ここから分かること

    書類に書く必要がないだけではありません。面接で聞かれた場合も、答える義務はありません。

    とはいえ、その場で「それは厚生労働省が」と返すのは現実的ではないと思います。私なら、こう返します。

    「そのご質問は、業務との関係で確認が必要なことでしょうか」

    答えを拒否するのではなく、必要性を尋ね返す形にすると、角が立ちません。そして、この質問に具体的に答えられない会社かどうかが、そのまま判断材料になります。


    3. 職務経歴書で、書いても効きにくいもの

    ここからは制度の話ではなく、書き方の話です。

    書類選考は、応募1件あたりにかけられる時間が長くありません。書いてあっても読まれない場所に配点を置かないという考え方で削っていきます。

    削って構わないもの

    項目 理由
    会社の事業内容の長い説明 応募先が知りたいのは会社ではなく本人です。1〜2行で足ります
    抽象的な自己PR(責任感がある、粘り強い) 検証できないので判断材料になりません
    担当した業務の網羅リスト 全部書くと、何が得意なのかが消えます
    応募先と関係のない古い職歴の詳細 職歴として残しつつ、記述量を落とします
    使えるソフトの羅列(Word、Excel、PowerPoint) 差がつかないので場所を取るだけです
    趣味・特技 職務経歴書には不要です

    逆に、短くても効くもの

    • 担当した範囲(何人のチームで、どこからどこまでを持っていたか)
    • 数字(規模・件数・金額・期間。増減より、まず規模)
    • 判断したこと(言われてやったことと、決めてやったことを分ける)
    • 再現できる理由(うまくいった理由が書いてあるかどうか)

    このうち「判断したこと」が最も効くと思います。同じ業務でも、指示を受けて実行した人と、やり方を決めた人では、任せられる仕事の範囲が変わるからです。


    4. 最初に見られる順番から逆算する

    書類選考は、上から順に精読されるわけではありません。おおむね、この順に確認されていきます。

    1. 直近の職種と在籍期間が、募集内容と噛み合っているか
    2. 職歴の連続性に説明のつかない空白がないか
    3. 担当範囲の規模が、募集しているポジションと釣り合っているか
    4. そこまで通って初めて、中身

    この順番で見られるなら、1ページ目の上半分にその3つが入っていないと、中身まで到達しません。

    だから、こうします

    • 職務要約を冒頭に3〜4行置く。ここに職種・年数・担当範囲・規模を入れる
    • 経歴は新しいものから書く(古い順に書くと、直近が下に沈みます)
    • 応募先に関係する経験を、上の方に厚く書く
    • A4で2枚まで。 3枚を超えると、2枚目以降が読まれない前提で考えたほうがいいです

    5. 書類が通らないときに見る順番

    何社か出して通らないとき、中身を書き直す前に確認したいことがあります。

    1. 応募している求人と、直近の職種がずれていないか
      書き方の問題ではなく、応募先の選び方の問題であることがあります。

    2. 職務要約が「経歴の要約」になっているか、「意気込み」になっていないか
      意気込みが冒頭にあると、判断材料が下に押し出されます。

    3. 数字が1つも入っていないのではないか
      規模が分からないと、釣り合っているかどうかを判断できません。

    4. 1つの書類を全社に出していないか
      応募先ごとに、上に置く経験を入れ替えるだけでも通過率は変わります。

    5. そもそも書類が原因なのか
      募集が終わっている、条件面で最初から外れている、という場合もあります。ここは応募者側からは見えません。

    書類を何度書き直しても変わらないときは、1番か5番であることが多いと思います。書き方の問題にして延々と直し続けるのは、いちばん消耗する進み方です。


    まとめ

    • 配偶者・扶養家族数(配偶者を除く)・配偶者の扶養義務・通勤時間は、厚生労働省の履歴書様式例に欄がありません
    • 性別欄は任意記載で、未記載も可能です
    • 本籍、家族、住宅状況、宗教、支持政党、愛読書などは、採用側が把握を避けるべき事項として挙げられています。書く必要も、答える義務もありません
    • 職務経歴書で削るのは、会社説明・抽象的な自己PR・網羅リスト・ソフトの羅列
    • 残すのは、担当範囲・数字・判断したこと・再現できる理由
    • 1ページ目の上半分に、職種・年数・担当範囲・規模を置く

    書類は、通すための文章ではなく、判断してもらうための材料だと思います。材料が足りないから判断されないだけ、というケースはかなりあります。


    出典

    • 厚生労働省「履歴書の様式例の作成について」(令和3年4月)― 性別欄を任意記載に変更し未記載も可能とすること、配偶者・扶養家族数・配偶者の扶養義務・通勤時間の各欄を設けていないこと
    • 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」― 本人に責任のない事項/本来自由であるべき事項の各項目、および本人の適性・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用について

    いずれも2026年9月12日に確認した内容です。制度は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省のサイトでご確認ください。

    なお、本記事の第3節以降は選考実務の一般的な傾向にもとづく整理であり、特定の企業の運用を示すものではありません。

  • 転職サイト・エージェント・スカウト・キャリアコーチングの違い|まだ転職を決めていない人のための使い分け

    転職サイト・エージェント・スカウト・キャリアコーチングの違い|まだ転職を決めていない人のための使い分け

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    私は転職を勧めません。この記事も、動いた方がいいという話ではありません。

    ただ、相談先を1種類だと思っていると、合わないところに行って「やっぱり転職は向いていない」と結論づけてしまうことがあります。それは相談先の選び方の問題であって、本人の問題ではないと思います。

    この記事では、4種類の相談先がそれぞれ誰からお金をもらっているかを整理します。お金の出どころが分かると、そこが何を勧めてくるかが先に読めます。


    4種類を並べます

    誰が費用を払うか 何をしてくれるか 向いている状態
    転職サイト(求人媒体) 企業が掲載料を払う 求人を探す・応募する 求人の相場を知りたい
    転職エージェント(人材紹介) 企業が成功報酬を払う 求人紹介・書類添削・面接調整 応募する意思がある
    スカウト(ダイレクトリクルーティング) 企業が媒体に費用を払う 企業から声がかかる まだ動かず市場価値を測りたい
    キャリアコーチング 本人が払う 進路の整理。求人紹介はしない 転職するかどうかから決めたい

    上3つは無料で、キャリアコーチングだけ有料です。 ここに理由があります。


    なぜエージェントは無料で使えるのか

    転職エージェントは職業安定法上の「有料職業紹介事業」にあたります。この「有料」は企業から料金を取るという意味で、求職者からではありません。

    厚生労働省の業務運営要領には、こう定められています。

    • 求職者からの手数料徴収は原則禁止(職業安定法 第32条の3)
    • 例外は、芸能家・モデル・経営管理者・科学技術者・熟練技能者に限られます。しかも後者3つは年収700万円を超える場合に限られます(このほか、家政婦(夫)や調理士などの一部の職業では、少額の求職受付手数料が認められています)

    つまり、一般の会社員が転職エージェントに紹介手数料を請求されることは、制度上、原則としてありません。「無料なのは何か裏があるのでは」と身構える必要は薄いと思います。裏ではなく、そういう仕組みです。

    手数料は企業が払います

    企業が払う手数料には2種類あります。

    • 上限制手数料:支払われた賃金額の11.0%(免税事業者は10.3%)が上限
    • 届出制手数料:厚生労働大臣に届け出た手数料表にもとづく額。上限率は法律で決まっていません

    世間でよく言われる「年収の◯%」という数字は、後者の届出制手数料として各社が独自に届け出ているものです。法定の率ではないので、会社によって違います。


    手数料の実績は、調べられます

    ここはあまり知られていないと思います。

    職業紹介事業者は、職業紹介の実績を「人材サービス総合サイト」で公表することが義務づけられています。 厚生労働省が運営しているサイトです。

    つまり、登録しようとしているエージェントが

    • どういう手数料表を届け出ていて、取扱職種ごとの平均手数料率がどれくらいか
    • 1年間に何人が就職したのか。そのうち無期雇用で就職したのは何人か
    • 無期雇用で就職した人のうち、6ヶ月以内に(解雇以外の理由で)離職した人が何人いるか

    を、事前に見ることができます。

    最後の項目が特に有用だと思います。入って半年で辞めた人の数は、そのエージェントがどういう紹介をしているかの手がかりになります。

    サイト名で検索すれば出てきます。登録前に事業者名で一度引いてみる価値はあります。


    キャリアコーチングが有料である理由

    キャリアコーチングは求人を紹介しません。 だから企業から報酬を受け取る構造がなく、本人が払うことになります。

    これは高いか安いかの話ではなく、利害の向きが違うということです。

    転職エージェント キャリアコーチング
    報酬が発生する条件 入社が決まったとき 本人が申し込んだとき
    「転職しない」という結論 報酬にならない 結論としてありうる
    求人紹介 ある ない

    エージェントの担当者が悪意を持っているという話ではありません。ただ、入社が決まらないと1円にもならない仕組みの中にいる人に「転職しない方がいいですか」と聞くのは、質問の相手として適切ではないと思います。

    逆に、求人を紹介してほしい段階でコーチングに行くと、お金を払って求人が出てこないことになります。

    「決まっていない」ならコーチング、「決めた」ならエージェント。 この順番です。

    「無料のキャリアコーチング」を見かけたら

    最近は、無料をうたうキャリアコーチングもあります。実際に見てみると、求人紹介まで込みで無料という作りでした。

    無料で求人紹介があるなら、報酬の出どころは前に書いたとおり企業側ということになります。つまり名前はコーチングでも、利害の向きはエージェントと同じ側にあります。

    悪いという話ではありません。ただ上の表で言えば、「報酬が発生する条件=入社が決まったとき」の列に入ります。「転職しない」という結論を一緒に探してもらう相手としては、有料のコーチングとは前提が違います。

    見るのは名前ではなく、お金がどこから出ているかのほうだと思います。

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    スカウトは「まだ動かない人」向けです

    スカウトサービスは、職務経歴を登録しておくと企業から連絡が来る仕組みです。

    これの価値は、求人が見つかることよりも今の経歴にどういう会社が反応するかが分かることにあると思います。

    • 想定より高い年収帯から声がかかる
    • まったく違う業界から声がかかる
    • 半年間なにも来ない

    どれも判断材料になります。3つ目も含めてです。何も来ないなら、経歴の書き方に問題があるのか、そもそも需要のある書き方になっていないのか、どちらかを疑うところから始められます。

    応募する義務はないので、動くかどうか決める前の段階に一番合っています。


    学び直しという選択肢について

    相談先を4つ挙げましたが、「今の会社が合わない」の答えが必ずしも転職とは限りません。

    • 社内での異動・職種転換
    • 資格や学位の取得
    • 副業で別の収入源を持つ

    このうち学位の取得については、働きながら通えるコースを扱う相談窓口があります。転職エージェントは求人紹介が仕事なので、この選択肢は出てきません。選択肢として存在することだけ知っておくと、比較の幅が変わります。

    私は、転職しない結論に落ち着くこと自体は失敗ではないと思っています。困るのは、比較していないのに「今のままでいい」と決めてしまうことの方です。


    どこに行くかの判断

    今の状態 行き先
    転職するかどうかも決まっていない キャリアコーチング、またはスカウト登録
    相場と求人の中身を知りたい 転職サイトで検索だけする
    応募する意思がある 転職エージェント
    経歴が市場でどう見えるか知りたい スカウト登録
    転職以外の道も並べたい 学び直し・社内異動も含めて検討

    併用して構いません。 スカウトに登録しながらエージェントに会う、は普通にできます。


    面談の前に決めておくこと

    エージェントでもコーチングでも、初回は無料の面談から始まるところがほとんどです。

    その場で決める必要はありません。ただ、行く前にこの3つは決めておいた方が、時間が無駄になりません。

    1. 今日は決めない、と先に伝える
      「情報収集の段階です」と最初に言っておくと、進め方が変わります。言わないと、応募前提で話が進みます。

    2. 譲れない条件を1つだけ決めておく
      全部言うと調整されます。1つに絞ると、それが通らない求人を最初から外せます。

    3. その場で書類を書かない
      同意書や個人情報の取り扱いは、持ち帰って読んで問題ありません。急ぐ理由がある側は、こちらではありません。


    まとめ

    • 上3つ(サイト・エージェント・スカウト)は企業がお金を払う。コーチングだけ本人が払う
    • 求職者からの手数料徴収は原則禁止なので、エージェントが無料なのは制度どおりです
    • エージェントの手数料率・就職者数・6ヶ月以内の離職率は、人材サービス総合サイトで公開されています
    • 「決めていない」ならコーチングかスカウト、「決めた」ならエージェント
    • 転職しない結論も含めて比較することが目的で、動くことが目的ではありません

    まず1つ選ぶなら、今の経歴に何が反応するかを見るところからでいいと思います。応募しなくても分かります。


    出典

    • 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領 第6 手数料」(職業安定法 第32条の3、上限制手数料11.0%/免税事業者10.3%、求職者からの手数料徴収の原則禁止と例外職種)
    • 厚生労働省「人材サービス総合サイト」(職業紹介事業者の手数料実績・就職者数・離職状況の公表)

    いずれも2026年9月12日に確認した内容です。制度は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省のサイトでご確認ください。

  • 求人票で危ない会社を見分ける7つの表現

    求人票で危ない会社を見分ける7つの表現

    【PR】この記事にはアフィリエイト広告を含みます。

    転職サイトを開いては閉じる、を繰り返している人向けの記事です。

    応募するかどうかを決める前に、求人票のどこを見ればいいのか。実際に出ている求人を100件ほど読んで、繰り返し出てくる書き方をまとめました。

    見るのは、この7か所です。

    1. 勤務地が本社の住所で書かれている
    2. 固定残業代の内訳が書かれていない
    3. 給与レンジが2倍近くひらいている
    4. 「年間休日105日」と「週休2日」が並んでいる
    5. 業務範囲が「幅広い」で終わっている
    6. 選考基準が「やる気」になっている
    7. 「アットホームな職場」が単体で置かれている

    どれも普通の会社が普通に使う書き方です。入っているから危ない、という話ではありません。見るのは表現そのものではなく、その表現が「何を書かずに済ませているか」のほうです。


    1. 勤務地が本社の住所で書かれている

    一番見落とされやすいと思っているのがこれです。

    求人サイトの一覧で「東京都◯◯区」と表示されていた求人を開いてみたら、仕事内容の冒頭に「※本社は東京ですが、◯◯県で勤務いただきます」と書かれていました。アクセス欄の最寄り駅も、まったく別の県の駅でした。ついでに言うと、会社の登記上の本社所在地はさらに別の県でした。

    これは違法でも何でもありません。ただ、東京で仕事を探している人の検索結果に出るように書かれているということです。

    見るところは3つあります。

    • 一覧の勤務地と、詳細ページの「アクセス」欄の最寄り駅が一致しているか
    • 仕事内容の本文に「※」で始まる但し書きがないか
    • 「転勤なし」と書いてあるとき、どこに固定されるのか

    2. 固定残業代の内訳が書かれていない

    固定残業代(みなし残業)そのものは、悪い制度ではありません。問題は書き方のほうです。

    固定残業代を採用している会社は、募集要項や求人票にこの3つを明示することとされています。

    • 固定残業代を除いた基本給の額
    • 固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法(何時間分で、いくらか)
    • 固定残業時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働には割増賃金を追加で支払うという記載

    青少年の雇用の促進等に関する法律(若者雇用促進法、2015年10月施行)にもとづく指針で示されているもので、青少年が応募する可能性のある募集・求人が対象です。

    つまり、「月給28万円(固定残業代含む)」とだけ書いてある求人は、基本給がいくらなのかが分からない状態ということになります。書き忘れなのか、書きたくないのかは分かりません。ただ、確認しないまま進む理由もないと思います。

    面接で聞くのが気まずいなら、応募前に求人サイトの問い合わせ機能から聞いてしまうのが早いです。答えられない会社なら、その時点で分かります。


    3. 給与レンジが2倍近くひらいている

    「月給26万円〜50万円」という求人がありました。「月給235,000円〜352,500円」というのもありました。

    レンジがひらいていること自体は、経験者と未経験者を同じ枠で募集していれば普通に起こります。

    ただ、未経験可の求人で上限が2倍近いとき、上限に届く人はほぼ想定されていないと考えたほうが、あとでがっかりしません。実際に提示されるのは下限の額です。

    上限の数字が何を意味しているのかは、面接で聞けば分かります。「上限の50万円は、どういう経験と年次の方が該当しますか」と聞いて、具体的な人物像が返ってこないなら、それは募集用の数字だと思います。


    ここまでの3つは、求人票だけでは確定しない項目です。実際の勤務地、固定残業の内訳、提示額がレンジのどこになるか。どれも応募前に聞けば出てくることがあります。

    下は広告です。ここを経由して登録があった場合、この記事に紹介料が入ります。紹介する側は入社が決まってはじめて報酬になる立場なので、「この求人はやめたほうがいいですか」と聞く相手には向きません。聞き方と、相手を選ぶときの注意は記事の後半に書いています。

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    4. 「年間休日105日」と「週休2日」

    年間休日105日という表記は、求人サイトを東京都・正社員で絞っても非常に多く出てきます。珍しい数字ではありません。

    ただ、105日というのは1日8時間・週40時間で働く場合の、ほぼ下限にあたる日数です。土日祝が休みの会社だと120日前後になるので、その差は年間で15日ほど。3週間ぶんの休みが違います。

    それと、「週休2日」と「完全週休2日」は別の意味です。

    • 完全週休2日 → 毎週2日休める
    • 週休2日 → 月に1回以上、2日休める週がある

    「週休2日」だけの記載なら、隔週で土曜出勤という可能性が残ります。これも面接で聞けば済む話です。

    もうひとつ、「週休2日、年間休日120日以上」と書きながら、休日欄の下に「月毎のシフトにより休日が変動する場合があります」と添えてある求人がありました。休日の日数と、休日を選べるかどうかは別の話だと思います。


    5. 業務範囲が「幅広い」で終わっている

    複数の求人で、ほぼ同じ言い回しを見ました。

    • 「少人数の会社だからこそ、担当業務だけにとらわれず」
    • 「担当業務にとらわれず、スタッフ同士で協力しながら」
    • 「状況に応じてさまざまな業務に関わる機会があります」

    書いてある内容は本当だと思います。少人数の会社では実際にそうなります。

    見ておきたいのは、その「幅広い」がどこまでを含むのかです。ある求人では、応募資格の欄に「SNSによる情報発信ができる方」が入っていました。職種は事務とガイドです。

    入社してから「これも私の仕事なんですか」と思う場面を減らしたいなら、面接で「入社1年目の方が実際に担当している業務を、時間の配分がわかる形で教えてください」と聞くのが確実です。1日の流れを書いてくれている求人なら、そこを読むだけでもかなり分かります。


    6. 選考基準が「やる気」になっている

    「アットホームな社風で伸び伸び仕事ができます。やる気のある方を優先します」という一文がありました。

    やる気を見ること自体は、どの会社もやっています。ただ、求人票に書かれる選考基準が態度の話だけになっているとき、評価の基準もそうなっている可能性はあると思います。

    何ができれば評価されるのかが決まっていない職場は、頑張っても評価が変わらない職場になりがちです。これは入ってからだと直せません。

    求める人材の欄が「◯◯したい!」「◯◯な方!」だけで埋まっていて、必要なスキルや経験の記載がまったくない求人は、そこを面接で確認しておくと後が楽です。


    7. 「アットホームな職場」は、単体では何も意味しない

    最後にこれを置いたのは、この言葉だけで判断するのは違うと思っているからです。

    「アットホームな職場」は、東京都の正社員求人に絞ってもきわめて多く使われています。これだけ広く使われている言葉が、特定の何かを示しているとは思えません。実際、家族経営で本当に居心地のいい会社もあります。

    見るべきなのは、その言葉が何と一緒に書かれているかです。

    たとえば、こういう組み合わせのときは、少し立ち止まったほうがいいかもしれません。

    • 「アットホーム」+ 給与レンジが広い + 固定残業代の内訳なし
    • 「アットホーム」+「少人数」+「幅広い業務」+ 年間休日105日
    • 「アットホーム」+「やる気重視」+ 具体的な業務内容が3行しかない

    言葉ひとつではなく、書かれていない情報がいくつ重なっているかで見ると、だいぶ違って見えると思います。


    それでも、応募しない理由にはなりません

    ここまで7つ書いておいて言うのもなんですが、全部当てはまっている求人に応募してはいけない、とは思っていません。

    求人票は採用担当が書いています。書き手が不慣れなだけということもありますし、社内の情報が集まらなくて書けなかっただけ、ということもあります。求人票が下手な会社が、働きにくい会社とは限りません。

    私がこの記事で言いたいのは、「気になった点を面接で聞ける状態にしておく」ということだけです。

    聞いて答えてくれるなら、それは判断材料が1つ増えたということになります。聞いても答えが返ってこないなら、それも判断材料です。どちらにしても、応募する前に読み解いておくと、面接の時間の使い方が変わると思います。

    転職するかどうかは、この記事では決めなくていいです。

    求人票から読み取れない項目について

    ここまでの7つは、求人票に書いてあることから読み取る話です。ただ、書かれていないことのうち、面接まで待たなくても分かるものがあります。

    その求人を扱っている側に聞く方法です。募集の背景、前任者がいたのか、決まらずに何ヶ月出ているのか。求人票には出てきませんが、紹介する立場の人は知っていることがあります。

    ただし前提があります。紹介する側は、入社が決まってはじめて報酬になる立場です。「この求人はやめたほうがいいですか」と聞く相手には向いていません。聞くなら事実を聞く形にしたほうが、答えが返ってきます。

    誰に何を聞くかは、相談先の違いを整理した記事に4種類に分けて書きました。

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    出典と注記

    • 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を採用する場合の明示事項」― 若者雇用促進法にもとづく指針で示された3項目(2026年9月12日確認)
    • 労働基準法にもとづく週40時間・1日8時間の上限(年間休日日数の計算根拠)

    ※ 記事内で引用した求人の表現は、2026年9月時点で実際に公開されていた複数の求人票から採録したものです。特定の企業を批判する意図はないため、社名は記載していません。
    ※ 求人の傾向は、2026年9月時点で東京都・正社員を条件に検索した結果にもとづきます。