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私は転職を勧めません。この記事も、動いた方がいいという話ではありません。
ただ、相談先を1種類だと思っていると、合わないところに行って「やっぱり転職は向いていない」と結論づけてしまうことがあります。それは相談先の選び方の問題であって、本人の問題ではないと思います。
この記事では、4種類の相談先がそれぞれ誰からお金をもらっているかを整理します。お金の出どころが分かると、そこが何を勧めてくるかが先に読めます。
4種類を並べます
| 誰が費用を払うか | 何をしてくれるか | 向いている状態 | |
|---|---|---|---|
| 転職サイト(求人媒体) | 企業が掲載料を払う | 求人を探す・応募する | 求人の相場を知りたい |
| 転職エージェント(人材紹介) | 企業が成功報酬を払う | 求人紹介・書類添削・面接調整 | 応募する意思がある |
| スカウト(ダイレクトリクルーティング) | 企業が媒体に費用を払う | 企業から声がかかる | まだ動かず市場価値を測りたい |
| キャリアコーチング | 本人が払う | 進路の整理。求人紹介はしない | 転職するかどうかから決めたい |
上3つは無料で、キャリアコーチングだけ有料です。 ここに理由があります。
なぜエージェントは無料で使えるのか
転職エージェントは職業安定法上の「有料職業紹介事業」にあたります。この「有料」は企業から料金を取るという意味で、求職者からではありません。
厚生労働省の業務運営要領には、こう定められています。
- 求職者からの手数料徴収は原則禁止(職業安定法 第32条の3)
- 例外は、芸能家・モデル・経営管理者・科学技術者・熟練技能者に限られます。しかも後者3つは年収700万円を超える場合に限られます(このほか、家政婦(夫)や調理士などの一部の職業では、少額の求職受付手数料が認められています)
つまり、一般の会社員が転職エージェントに紹介手数料を請求されることは、制度上、原則としてありません。「無料なのは何か裏があるのでは」と身構える必要は薄いと思います。裏ではなく、そういう仕組みです。
手数料は企業が払います
企業が払う手数料には2種類あります。
- 上限制手数料:支払われた賃金額の11.0%(免税事業者は10.3%)が上限
- 届出制手数料:厚生労働大臣に届け出た手数料表にもとづく額。上限率は法律で決まっていません
世間でよく言われる「年収の◯%」という数字は、後者の届出制手数料として各社が独自に届け出ているものです。法定の率ではないので、会社によって違います。
手数料の実績は、調べられます
ここはあまり知られていないと思います。
職業紹介事業者は、職業紹介の実績を「人材サービス総合サイト」で公表することが義務づけられています。 厚生労働省が運営しているサイトです。
つまり、登録しようとしているエージェントが
- どういう手数料表を届け出ていて、取扱職種ごとの平均手数料率がどれくらいか
- 1年間に何人が就職したのか。そのうち無期雇用で就職したのは何人か
- 無期雇用で就職した人のうち、6ヶ月以内に(解雇以外の理由で)離職した人が何人いるか
を、事前に見ることができます。
最後の項目が特に有用だと思います。入って半年で辞めた人の数は、そのエージェントがどういう紹介をしているかの手がかりになります。
サイト名で検索すれば出てきます。登録前に事業者名で一度引いてみる価値はあります。
キャリアコーチングが有料である理由
キャリアコーチングは求人を紹介しません。 だから企業から報酬を受け取る構造がなく、本人が払うことになります。
これは高いか安いかの話ではなく、利害の向きが違うということです。
| 転職エージェント | キャリアコーチング | |
|---|---|---|
| 報酬が発生する条件 | 入社が決まったとき | 本人が申し込んだとき |
| 「転職しない」という結論 | 報酬にならない | 結論としてありうる |
| 求人紹介 | ある | ない |
エージェントの担当者が悪意を持っているという話ではありません。ただ、入社が決まらないと1円にもならない仕組みの中にいる人に「転職しない方がいいですか」と聞くのは、質問の相手として適切ではないと思います。
逆に、求人を紹介してほしい段階でコーチングに行くと、お金を払って求人が出てこないことになります。
「決まっていない」ならコーチング、「決めた」ならエージェント。 この順番です。
「無料のキャリアコーチング」を見かけたら
最近は、無料をうたうキャリアコーチングもあります。実際に見てみると、求人紹介まで込みで無料という作りでした。
無料で求人紹介があるなら、報酬の出どころは前に書いたとおり企業側ということになります。つまり名前はコーチングでも、利害の向きはエージェントと同じ側にあります。
悪いという話ではありません。ただ上の表で言えば、「報酬が発生する条件=入社が決まったとき」の列に入ります。「転職しない」という結論を一緒に探してもらう相手としては、有料のコーチングとは前提が違います。
見るのは名前ではなく、お金がどこから出ているかのほうだと思います。
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スカウトは「まだ動かない人」向けです
スカウトサービスは、職務経歴を登録しておくと企業から連絡が来る仕組みです。
これの価値は、求人が見つかることよりも今の経歴にどういう会社が反応するかが分かることにあると思います。
- 想定より高い年収帯から声がかかる
- まったく違う業界から声がかかる
- 半年間なにも来ない
どれも判断材料になります。3つ目も含めてです。何も来ないなら、経歴の書き方に問題があるのか、そもそも需要のある書き方になっていないのか、どちらかを疑うところから始められます。
応募する義務はないので、動くかどうか決める前の段階に一番合っています。
学び直しという選択肢について
相談先を4つ挙げましたが、「今の会社が合わない」の答えが必ずしも転職とは限りません。
- 社内での異動・職種転換
- 資格や学位の取得
- 副業で別の収入源を持つ
このうち学位の取得については、働きながら通えるコースを扱う相談窓口があります。転職エージェントは求人紹介が仕事なので、この選択肢は出てきません。選択肢として存在することだけ知っておくと、比較の幅が変わります。
私は、転職しない結論に落ち着くこと自体は失敗ではないと思っています。困るのは、比較していないのに「今のままでいい」と決めてしまうことの方です。
どこに行くかの判断
| 今の状態 | 行き先 |
|---|---|
| 転職するかどうかも決まっていない | キャリアコーチング、またはスカウト登録 |
| 相場と求人の中身を知りたい | 転職サイトで検索だけする |
| 応募する意思がある | 転職エージェント |
| 経歴が市場でどう見えるか知りたい | スカウト登録 |
| 転職以外の道も並べたい | 学び直し・社内異動も含めて検討 |
併用して構いません。 スカウトに登録しながらエージェントに会う、は普通にできます。
面談の前に決めておくこと
エージェントでもコーチングでも、初回は無料の面談から始まるところがほとんどです。
その場で決める必要はありません。ただ、行く前にこの3つは決めておいた方が、時間が無駄になりません。
-
今日は決めない、と先に伝える
「情報収集の段階です」と最初に言っておくと、進め方が変わります。言わないと、応募前提で話が進みます。 -
譲れない条件を1つだけ決めておく
全部言うと調整されます。1つに絞ると、それが通らない求人を最初から外せます。 -
その場で書類を書かない
同意書や個人情報の取り扱いは、持ち帰って読んで問題ありません。急ぐ理由がある側は、こちらではありません。
まとめ
- 上3つ(サイト・エージェント・スカウト)は企業がお金を払う。コーチングだけ本人が払う
- 求職者からの手数料徴収は原則禁止なので、エージェントが無料なのは制度どおりです
- エージェントの手数料率・就職者数・6ヶ月以内の離職率は、人材サービス総合サイトで公開されています
- 「決めていない」ならコーチングかスカウト、「決めた」ならエージェント
- 転職しない結論も含めて比較することが目的で、動くことが目的ではありません
まず1つ選ぶなら、今の経歴に何が反応するかを見るところからでいいと思います。応募しなくても分かります。
出典
- 厚生労働省「職業紹介事業の業務運営要領 第6 手数料」(職業安定法 第32条の3、上限制手数料11.0%/免税事業者10.3%、求職者からの手数料徴収の原則禁止と例外職種)
- 厚生労働省「人材サービス総合サイト」(職業紹介事業者の手数料実績・就職者数・離職状況の公表)
いずれも2026年9月12日に確認した内容です。制度は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省のサイトでご確認ください。
